数の子は言わずと知れたニシンの子(魚卵)です。
メスの腹から取り出し卵を塩漬けにした物で、ニシンを昔「かど」と呼んでいて
「かどのこ」が訛って「かずのこ」になったと言われています。
残念ながらニシン(鰊、鯡)を食べるのは本州では難しく
私も、札幌の市場に行った時、場内の鮨屋さんで一度だけ生のニシンを
食べたことがあるのですが、その味は絶品でした…。
刺身は勿論、塩焼きですら中々食せないのは礼文、三陸で僅かしか入荷しないからです…。
そのためニシンは加工品が多く、数の子、子持ち昆布、子持ち若芽、
身欠きにしんなどが市場に出回っています。
ニシンの卵は沈性、粘着性でかたまり状になって海草に付着しますが、
このように昆布や若芽に卵を産みつけたものが、子持ち昆布や子持ち若芽です。
人工的にスプレーで付着させたものもありますが、
当店では天然物のみを使用しています。
身欠きにしんはニシンを卸し乾燥させたもので、
それを煮て、昆布巻きやニシン蕎麦などで使用されています。
昭和の初め頃までは北海道を中心にニシン漁が盛んで「ソーラン節」でも歌われ、
ニシン御殿と呼ばれる大邸宅を持つ漁師も多かったと聞きます。
その後、気候変動、乱獲で、水揚げが激減して
現在では国産の数の子は貴重品になり、黄金色をしていることや
希少価値から「黄色いダイヤ」などと呼ばれるようになりました。
近年は、カナダ、アラスカ、ロシアなどで水揚げされたものを
輸入して国内で塩数の子として加工しているのがほとんどです。
数の子は他の魚卵と違い硬く歯応えがあり、噛むと口の中でプチプチと音がしますので
「数の子は音を楽しむ」とも言われそれを好む人もいます。
修行時代に生の数の子が入り、塩漬けでなく天日干しにしたことがありますが、
その味は、かの有名な北大路魯山人が書き残しているように、塩漬けより美味しかったです。
干し数の子は最近ではほとんどありませんが、
北海道で僅かながら3月から5月のニシンの産卵時期に、新物の春数の子が出ます。
普通の数の子は塩蔵品ですが、新物はほのかな塩味で濃厚な風味もあり歯応えも違います、
これは、一度食べてみる価値があると思います。