地域によって特色あり!和食の名脇役「漬物」

きくいち

2016年11月02日 15:38

一言で「漬物」と言っても、梅干し・ぬか漬け・福神漬けなど様々な種類があります。全国各地には遥か昔から脈々と受け継がれてきた漬物の文化があり、日本はまさに漬物大国と言えます。そこで、日本の食卓に欠かせない漬物の秘密に迫ってみました。

ご存知の通り、漬物は保存食の一種。食卓に彩りを添える漬物は元々、生きるための知恵から生まれたようです。 漬物は元来、野菜を始めとする食品保存が目的ですから、たとえば雪国で冬の間は作物がまったく採れない地方では、冬の間は野菜に不自由することになります。そこで、冬の間でも野菜を充分に食べられるようにと考えだされたのが野菜を塩漬けにした保存食。すなわち漬物の先祖です。

作物が取れない冬でも野菜が食べられるようにと考案されたのが漬物の元祖とのこと。ならば、漬物とは、その土地の気候と四季の変化によって生まれたものとも言えそうです。

ところで、食品はなぜ塩などに漬け込むことで長持ちするようになるのでしょうか。その答えは「浸透圧」の作用によるものなのだとか…

浸透圧というのは、濃度の高い液体に向けて、濃度の低い液体から水が流れていき、最終的には濃度が同じになる、というものです。この浸透圧により、雑菌が繁殖しにくい環境にあるからなのです。
塩分濃度が高い物の中に雑菌が混入するとします。生物の細胞膜というのは、半透膜です。つまり半透膜が必要な浸透圧現象を起こす事が可能なのです。この環境下において雑菌は、浸透圧現象により体内の水分を奪われ死滅してしまうのです。生きている事が出来る雑菌であったとしても、繁殖のスピードはものすごく遅くなります。

塩分濃度の高いところでは、食品を腐らせる雑菌は浸透圧によって体内の水分を奪われる為、死んでしまうか、著しく活動を制限されるそうです。浸透圧が雑菌から食品を守ってくれていたのです。



冬の厳しい東北地方の漬物
漬物は本来保存食として生まれたものなので、野菜や作物が豊富な地域では少なく、不作の地域や時期に多く作られてきました。東北地方に漬物が多いのもそういったことが理由です。冬の雪の時期には野菜が採れないので保存食として蓄えていました。その他にも東北地方や北陸地方など雪の多い地域では漬物文化が発展して来ました。



「いぶりがっこ」は、漬物として使う干し大根が凍ってしまうのを防ぐために、大根を囲炉裏の上に吊るして燻し、米糠で漬け込んだ雪国秋田の伝統的な漬物です。

気温の高い九州地方の漬物
暑いと色々なものが腐りやすくなります。そうした気候の下では、塩漬けの漬物も発酵が進み過ぎて美味しく作ることができません。そのため、すでに発酵食品として一度完成されている醤油や味噌、粕などが使われました。そうすることで発酵をゆっくりにすることができたからです。



温かい気候の下では発酵が促進されてしまうので、塩漬けの漬物は美味しく作れないとのこと。そこで、既に発酵食品として完成されている醤油や味噌などを使って漬物を作るのだとか。 。大分県に伝わる民話の主人公の吉四六さんの名前がつけられた大分県の名産「吉四六漬け、胡瓜、大根、人参をメインに低温で長期間独自のもろみに漬け込んだ漬物です。

漬物文化が根付いた京都の漬物
漬物と言えば京都が有名ですが、それは京都盆地が海から遠いため、魚介類に代わる食料として野菜づくりが発達したこと、そして保存食を工夫せざるをえない状況でもあったことが原点となっています。

京都では室町時代に「聞香」が流行ったことも漬物文化が発達した理由の一つと言われています。聞香とは香木の香りをかいでその種類を当てるというもので、鼻の疲れを取るために漬物が用いられたのだとか…

「聞香に由来する」というのは、漬物が香の物と呼ばれた理由の諸説のひとつ。聞香とは、香道において何種類もの香を聞き分けることを指します。種類を正しく言い当てるためには、途中で鼻の疲れを取る必要があり、香の物はそのリセットの役割を担っていたとか漬物を「香の物」とも呼ぶのは、聞香において鼻をリセットするのに漬物を用いたためという説があるそうです。漬物の香りが意外な活躍をしたのですね

日本と海外の漬物の違い
漬物は日本固有のものではなく、「ピクルス」、「キムチ」、「ザワークラウト」など、世界には様々な漬物があります。

基本的に、日本の漬け物は白米に合わせるために、欧米の漬け物はパンや脂っこい料理と合わせるために作られています。欧米の漬け物には、ハーブや様々な種類の香辛料がよく使われることも、日本の漬け物との大きな違いです。つまり、漬け物を見ればそれだけでその国の食文化を大体想像することができるというわけです。

どの国でも他の食品と相性の良い漬物が作られているとのこと。欧米ではパンや脂っこい料理と合わせるため酸味の強いものが多く、一方、日本ではごはんが進むような漬物が作られているそうです。ただ保存するだけでなく、海外でも漬物は食べやすいように工夫されてきたようです

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