関西寿司のタネ

きくいち

2020年07月26日 08:41

関西ずしの主な種類には、大阪を代表する「箱ずし」や「小鯛雀ずし」「サバの棒ずし」や「バッテラ」「松前ずし」「巻きずし」などがあります。これらは醤油を付けず召し上がっていただけ、事前に調理した材料を使用する為に、にぎりずしに比べて時間持ちがするという特徴があります

箱ずし


「箱ずし」とは「一枚箱」とか「二枚箱」とか呼ばれている箱で押したすしです。その箱は「白身の箱」「ケラの箱」「焼き身の箱」の3種類の箱を組み合わせてつくります。白身の箱はコダイ、ケラの箱は厚焼き玉子、海老、白身魚の3種、焼き身の箱にはアナゴ、またはハモなどのネタが使われるのが一般的です。



3 種類の箱ずしは、一枚箱の場合は6切れに切り、二枚箱は12切れに切り、白身2切れ、ケラ2切れ、焼き身2切れの計6切れの組み合わせを箱ずし1箱分とします。この様式が確立されたのは明治時代の中期、大阪船場、淡路町の吉野寿司三代目、寅三がそれまでの大衆魚から小鯛、車えび、厚焼き玉子等、高級な食材を使い、焼く、蒸す、煮る、酢で締める等の手間をかけ、二寸六分の箱で押した見た目にも美しいすしを考案、その前身は一般に、江戸期の柿(コケラ)ずしとされています。それが船場の旦那衆に大いに受け、大阪の郷土料理として現在に受け継がれています。箱ずしは、江戸前のにぎりずしに相当する位置をしめており、普通に大阪ずし一人前(盛り合わせ)といえば、箱ずしと巻ずし、伊達巻などで一人前をつくります。



また、大阪のすし屋用語では、現在でも箱ずしのことをケラ、またはコケラずしとも呼んでいます。漢字で柿(コケラ)と書くのは古く平安時代から用いられた言葉で、屋根を葺くときの薄くはいだ板のことをいい、その柿葺きのように薄く切りつけたネタを箱の中に詰めたすし飯の上に並べて押すことから柿(コケラ)ずし、略してケラずしといわれています。

小鯛雀ずし


「小鯛雀ずし」は大阪・福島の名物であった「雀ずし」が起源で、これは江鮒(エブナ、ボラの子)を背を開いて塩をしたものに飯を詰めこんだ生成のすしで、飯のために魚の腹がふくれて雀の形に似ているところからついた呼び名と考えられています。この江鮒を小鯛に変え、早ずしとしたのが「小鯛雀ずし」で、大阪の老舗『小鯛雀鮨・鮨萬』初代が創始したすしです。天明元年(1781)に、宮中(京都御所)にすしを納めることになったことから江鮒を小鯛に変えたのが始まりと記録にあり、200年以上の歴史を持ちます。ちなみに「小鯛雀ずし」は「小鯛雀鮨 鮨萬」の商標登録です。

関西のサバずし


関西ずしにおけるサバずしを大別すると「棒ずし」(別名、姿ずし)「松前ずし」「バッテラ」の三つに分かれます。このうちもっとも古いのは「棒ずし」で、「松前ずし」と「バッテラ」は明治時代に始められました。「サバの棒ずし」は魚の姿の形を活かすという点からみれば、日本のすしの源流であるとされる近江の鮒ずしなど、各地の現存する古いすしの系譜に入るものと考えられています。しかし、製法的には長時間漬け込んで自然発酵を待つ馴れずしとは異なり、酢を使って短時日にすしにしてしまう早ずしになります。元来、郷土ずしであった京都の「サバの棒ずし」を「鯖姿寿司」として完成させたのが祇園「いづう」の初代、いづみや卯兵衛であり、いまから約230年前の天明年間になります。「サバ棒ずし」が全国的に知られるようになったのも『いづう』の功績が大きいといわれています。



「松前ずし」は、北海道の松前昆布を肉厚の鯖寿司の上に巻いた棒寿司の事で、当初は「昆布巻ずし」などと呼ばれていましたが、明治45年に大阪の『丸万』が「松前ずし」の名前で商標登録してから、その呼び名が広まりました。その後『丸万』が登録をはずしたので誰でも使える一般名称になっています。すしを押す際には、布巾または、専用の長箱を使いますが、その箱にはいろいろな種類があります。

バッテラ


「バッテラ」は明治27~28年頃、当時、大阪湾でコノシロが大量にとれたことからそれを『寿司常』が布巾じめにして売り出したのが始まりです。その形がボートに似ていることからバッテラと呼ばれるようになりました。バッテラはボートを意味するポルトガル語のバッテイラ(bateira)が訛ってできた言葉です。その後、コノシロの値が上がり、かわって安いサバが使われるようになり、舟型では材料のロスが出やすいことから、今日見るような長方形のすし型に改良されました。具体的には、サバの押寿司の上に半透明の白板昆布を巻き、6切れに切ったものです。

小袖ずし


すしの切り口の断面が着物の小袖の形に似ていることから小袖ずし。折詰や特別な注文のときや、趣を添えるすしとして作られることが多く、材料にはサバ、コダイ、エビ、紅ザケ、ヒラメ、アジなどが使われ、昆布〆にして棒ずしにします。

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