スズキ(鱸)はブリやボラと同じように、幼魚から成魚までの間に何回か名を変える出世魚です。
背は青黒く、全体に銀白色に輝き、形はあくまでもスマートな流線形で、精悍な顔付きで第一背鱗の棘がピンと立っている姿は「鯛に次ぐ美魚」だと言われています。
背白身魚の代表格として、冬のヒラメ、春のマダイ、夏のスズキが誉れ高く、冬のハラブトも脂が乗って美味と言われ、特に東よりも西で人気が高く、関東からも関西市場に送くられています。
【出世魚】
1.ヒカリゴ …5cm前後で体が銀色に光って見える。
2.コッパ …当歳魚。小葉と書く。
3.セイゴ …2年魚。25cm前後。
4.フッコ …2~3年魚で30~40cm。関西では「ハネ」。
5.スズキ …4年魚で60~70cm。1mにもなるものもある。
6.ハラブト…冬の産卵期を向かえた大物。腹太。
【食べ方】
セイゴでは焼き物や煮物。スズキでは夏にあらい、刺身、湯引き等。
スズキのあらい…薄く刺身にした後、冷水で洗い、ふきんでふき上げ、梅肉か山葵醤油で食べる(生臭みを除くために魚を良く洗う)
スズキの湯あらい…スズキは皮が厚く、食べにくいが、湯あらいすることで、少し歯ごたえのある皮目と表面の若干の脂がぬけた刺身となり美味しい。
1.スズキの皮目に包丁で切り目を適宜入れ、へぎ造りにする。
2.お湯に酒をさじ1杯くらい加え、(1)をくぐらせてすぐ氷水に放つ。
3.ふきんで水気をとり、わさびか梅肉醤油で、薬味に塩揉み胡瓜や千切り茗荷を添える。
梅肉醤油は、梅干を包丁で細かく叩き醤油と煮切り酒を少し足してすり伸ばしたもの。梅干が酸いときは少し砂糖を加える
白身魚には、ATP(アデノシン3リン酸)という物質が多く含まれています。このATPは筋肉を引き締める役目があり、これに対し赤身魚はATPが少ないため、「あらい」にしても、あまり身がしまらないのです。
松江の名物スズキの奉書焼き
和紙の奉書紙を水に濡らし、魚体を2~3重に覆い包み、旨味を逃がさないように焙烙か天火で蒸し焼きにしたものを、煮返し醤油に紅葉卸しを加えた辛口の適当な割下につけて食べます。
平清盛とスズキ
清盛がまだ安芸守であった頃、伊勢の国の津から船で熊野神社へ参詣した時、途中の海上で大きなスズキが船中へ飛び込んだ。近従者が、「これはまさしく目出たい吉兆でございます。昔、周(中国)の武王の船へ飛び込んだことがあり、それから戦いに勝ち進み、天下を取ったとのことにございます。まさしく熊野権現のご利益に違いありません。早速料理して召し上がりませ」と言った。
その後、霊験あらたかに吉事のみが続き、太政大臣まで出世したことは「平家物語」に出ています。