これからが真鯊(まはぜ)の旬

きくいち

2013年11月28日 14:28

かの有名な歌麿も、「はぜ釣り舟」の題で遊女達の遊びの釣りを描いています。江戸の昔からマハゼは遊魚の対象として人気があり、秋には多くの釣り人が釣糸を垂れるという風物詩の一つでもありました。寒さが増してくると脂が乗ってきて旨さが一段と増し、活魚での扱いで季節感を持つ高級魚のひとつです。
 

(活けのハゼは刺身がお勧め。これはシロギスよりも透明感があり、旨味も強い)

夏には浅場にいるマハゼが水温が下がるにつれて深場に落ちていく。その時期が漁期であるし、また旬なのだ。この時期のマハゼは餌をたくさん食べ身がぱんぱんに張っている。

ハゼ釣りが盛んとなって「天麩羅船舟」(浜名湖はたきや漁)がにぎわう9月頃に、5~8cmに成長したものを「デキハゼ」と呼び、彼岸に釣れるのを「彼岸ハゼ」、11~2月にかけて深場に落ちたものを「落ちハゼ」や「ケタハゼ」、さらに泥地にもぐって口の周りが黒くなったのを「お歯黒ハゼ」と呼びます。このハゼは産卵の準備期に入ったことを示し、デキハゼに混じって釣れる13~18cmのハゼは「ヒネハゼ」と呼ばれ、これは2年物ですが、結局は春に産卵して一生を終えるのです。このようにハゼもある意味、出世魚なのかも…?

ハゼが一番旨いのは厳冬期の1月頃で、この頃のハゼは丸々と太って脂が乗りきっていて、腹中には真子や白子がはちきれんばかりに詰まってほとんど汚物がありません。また、産卵直前のハゼは何故か頭も骨もやわらかく、さっと煮付けただけで頭からしっぽの先まで全部食べられます。

【刺身】…粗塩を振り、もみ洗いしてヌメリを落とす。そのあと、鱗をとり、腹ビレと頭を一緒に落とします。これを三枚に卸すと半透明の白い身肉があらわれます。これを薄めのそぎ切りで刺身や糸造りにして、山葵醤油や生姜醤油で食べます。また「洗い」や「握り寿司」にしても美味で、「背越し(ブツ切り)」にして浅月や分葱、サラシ葱といった薬味を加えた酢味噌で和えると、これまた酒の肴としても最高です。

【天麩羅】…江戸前の天麩羅ではなくてはならないものです。やや高温で揚げるのがコツです。(これはハゼの皮の持つ香ばしさを生かすためです)
 
【唐揚げ】…小さいものはワタだけを除き、中型のものは頭を落として唐揚げにします。唐揚げで食べ残したものを南蛮漬けやマリネにすると保存がききます。

【甘露煮】…串に刺し、焼いて干した焼き干しをホウジ茶で軟らかくなるまでもどし、同じホウジ茶でコトコトと煮ずれしない様に軟らかく煮ます。仕上げは醤油と水飴を使いますが、どの過程でもハゼ以外のダシは使いません。ホウジ茶を使うのは甘露煮の色付けのためと、魚の臭みを消すためです。

 

卸すとまだ心臓が動いているのを1匹で2貫取りにします。クセのない爽やかな身の食感、肝との味のバランス。寿司飯が来ても決して負けない舌触りと、微かな苦みと旨味。まるで初夏のスズキのような、やはりマハゼそのものの味わいなのだなコレが…

関連記事