懐石/会席料理を知る(止め肴)

きくいち

2021年12月19日 10:34

今日はコース料理止め肴について
強肴とごはんのあいだに出される小鉢です。基本的には酢の物ですが、和え物が出されることもあります。煮物などの強肴を食べたのちに出される「止め肴」は、ごはんを食べる前の口直しとして用意されるものです。季節の魚介や野菜を使った酢の物や和え物が出されることが一般的です。




酢の物・和え物はていねいさが求められる料理
一見、簡単そうに見える酢の物・和え物は、作り方がシンプルだからこそ、料理人のていねいさがあらわれる料理です。酢の物・和え物をおいしく仕上げるには、食材に合った下ごしらえがかかせません。塩でもんだり、酢や塩で締めたり、下茹でしたり、酢洗いしたりと、食材が持つ長所と短所を見極めて、素材の持ち味が損なわれないように注意を払います。また、酢の物・和え物は、合わせ酢や和え衣と混ぜあわせてから時間が経つと、水っぽくなってしまい食感も悪くなります。



盛り付けに光るプロの技
料理の上に、彩りとして少量乗せられている野菜や海藻のことを「天盛り」と言います。代表的な天盛りには、ニンジン、キュウリ、ミョウガなどの野菜や、ワサビ、ショウガ、ミョウガなどの薬味、ノリやワカメなどが挙げられます。これらを薄切りや千切りにして「天盛り」として使用します。バランス良く盛り付けた料理に天盛りを添えると、香りと彩りが加わってさらに美しく見え、味の変化も期待できます。



素材の味を生かすには、「切る」技術が不可欠
止め肴でよく出される酢の物や和え物は、シンプルな料理であるだけに、素材の切り方によって味わいや口当たりが大きく変化します。また、仕上げに使用する「天盛り」にも、細かな包丁技術が求められます。味が良く、彩りも見事な料理へと仕上げるためには、日本料理の伝統である「切る」技術が欠かせません。



料理人の最上位「包丁人」
古くは料理人の最上位に「包丁人」という位があったことからも、日本料理において「切る技術」がいかに重要視されていたのかが分かります。当時は、包丁さばきの技術に流派があり、古代から続く公家の「四条流」、鎌倉幕府時代に式典における料理のすべてを担当していた「生間流」、室町時代に武家の包丁人として一大勢力を誇った「大草流」「進士流」などが形成されました。それぞれに、切り方、並べ方、食べ方の決まりが細かく決められており、また、料理を提供する場の目的や開催される季節によって、同じ食材でも違う切り方が定められていたことが伝えられています。




片刃包丁が可能にする包丁づかい
刺身包丁をはじめ、日本料理に使用する和包丁はほとんどが「片刃」の包丁です。そのため、食材に包丁のどちらの面を当てるかによって、その切り口が変化します。例えば、野菜などの食材をまっすぐに切り落とすときは、刃の付いていない部分が当たるため、断面が美しい直線となります。また、野菜の皮などを剥く場合は、刃の付いている部分を寝かせて当てるため、丸みを持たせながら、後ろが透けるような薄さで皮を剥くことができます。それらの技術を組み合わせることで、美しい料理が完成します。

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