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2012年06月11日

日本人に最も馴染み深いイカ

スルメイカ(旬…7月~10月)は日本で鮮魚として出荷されるイカの中で最も安価であり、そのため、日本人にとっては最も馴染み深いイカです。食用となるイカは、コウイカ(甲烏賊)、ヤリイカ(槍烏賊)、アオリイカ(煽烏賊)、モンゴウイカ(紋甲烏賊)、スルメイカ(鯣烏賊)などで、そのうちスルメイカが全イカ漁獲量の90%を占めています。

刺身や寿司、焼き物・煮物に酢の物、天婦羅やその他の揚げ物などのほか、内臓を活かして塩辛でも食され また、烏賊飯(いかめし)や烏賊そうめん(いかそうめん)なども人気の料理です。

日本人に最も馴染み深いイカ  

スルメイカとはスルメに加工するイカなのでこの名がつきました。ご存知の通りスルメは、内臓と眼球を取り除き、天日などで干した乾製品のことで、その名は「墨群(すみむれ)」がナマって「するめ」となったのだそうです。( ただし、「するめ」はスルメイカに限っての呼称ではなく、高級とされるケンサキイカ、もしくはヤリイカのそれを「一番するめ」と呼び、スルメイカのそれは「二番するめ」と呼ばれます)

また、スルメイカは内臓を取り除かず丸干しとしても加工される。 塩辛では、能登地方の魚醤である「いしる」の材料として、スルメイカとイワシの内臓が使われています。

しかし、そのスルメも酒の肴としては「アタリメ」と呼ばれたりして、また呼び名が変わります。これは「擦る目:スルメ」が忌み言葉として嫌われ、代わりに反対語の「当たり目:アタリメ」をもってきて「アタリメ」としたからです。

また、婚礼のお祝いには花嫁が逃げてしまわないように「寿留女」と書かれ、オアシ(足=銭)が多いという縁起かつぎとしても登場します。イカにしてみれば知らないところでいろいろな名前を付けられているわけですね。

では、イカとはどうしてイカなのか?「いか」という和名については、「形もいかめしく、骨も異様なれば名づくるなるべし」ということで「いかめしい」からきているのではないかと言われています。

もっとも不可思議なのは「烏」(からす)の「賊」(ぞく)とかいて烏賊(いか)と読むこと。なぜかといえば中国の古書『南越志』に「イカが水面に浮かんでいると、カラスはイカが死んでいるものと思いついばみに来る。するとイカは10本の足でカラスを巻き取って水中に引き入れ食べてしまう。烏を賊害するものだから烏賊」とあるのだそうです。

イカの10本足にもちゃんと別名「下足」(ゲソ)という名がついています。それは、昔は大勢が一つのところに集まって下足がたくさん脱ぎすてられたときに、これを整理するのに必ず十足ずつ束ねたのだそうで、イカの10本足を「ゲソ」と呼ぶようになったのだそうです。

市場では…鮮魚、冷凍ともに毎日のように入荷していて量的にも多く価格は安値安定です。氷を下にして並んだものを「下氷」、釣り上げたものを冷海水のなかでしめて、そのまま水氷で近場から直送したものを活けスルメと呼び、「活けスルメ」の方がやや高値です。季節によって大きさによって入荷方法が違いますが小型のものを発泡に無造作に投げ込んで出荷され、これを「バライカ」と呼んでいます。値段は大型以上に安いです。

日本周辺からオホーツク海、東シナ海まで棲息し、孵化して産卵するまでが1年、産卵すると死んでしまうので、まさに1年イカです。(スルメイカはメスが大きくオスが小さい)
市場で見ていると小振りの「ばらイカ」というものが真冬の日本海を皮切りに入荷してきます。それが初夏まで続くのですが、これは日本近海でのスルメイカが産卵期によって3系群あることによるものです。

スルメイカ3系群
春から夏生まれ群…日本海本州沿岸から九州沿岸、伊豆半島周辺で4月~8月に発生する。資源量は小さい。
秋生まれ群…東シナ海北部から日本海南西部で9月~11月に発生する。日本海の沖合を回遊し、大型になり、日本海での漁獲の7割を締めるもの。
冬生まれ群…東シナ海、九州北部で12月~3月に発生。黒潮にのって太平洋側を多くが回遊、もっとも北まで到達する。太平洋側での水揚げの多くはこの系群。 
 
呼び名は各地で「マイカ(真烏賊)」言い島根県では「シマメイカ」、「サルイカ」。静岡県沼津市では「ジルマイカ」徳島県阿南市では「カンセキ」などとも呼ぶようです。また春から初夏にかけてとれるまだ小振りのものを市場では「バライカ」初夏に関東周辺でとれる小さな若いイカは「ムギイカ(麦いか)」と言いますがこれは相模湾などで若いスルメイカがとれる時期と麦の収穫期が同じであることからきているようです。三重県尾鷲市では「チンチロ」とも…。

◆食べてみる◆
スルメイカの場合、生よりも焼く煮るなどしたときに味がぐんと増します。 ワタを醤油、酒などで溶き、そこで身などを煮る。ワタ煮。焼いてワタ醤油を塗るなど旨味の濃いワタを利用します。 野菜と煮ると、これまた非常に美味しくもち米を詰めて、甘辛く煮る「いか飯」や洋風にマリネーとかフライ(イカリング)なども美味です。
 
スルメイカならではの加工品にイカの塩辛があります。これはワタ(肝膵臓)と身を塩漬けして水分を取り去り、合わせて寝かしたもので意外に簡単に作れます。

乾物の鯣は米のとぎ汁でもどして煮ものなどに使います。またコンニャクを煮るときなどにだしとしても使います。東北などでは単に鯣をそのまま煮もの、おでんなどに使っているようですが、これでは苦みが出るので、やはりおでんのだしとして使う場合でも米のとぎ汁でもどして使った方がいいと思います。

■アニサキスの宿主。刺身などでは注意が必要です。

簡単レシピ…
焼きイカ
スルメイカを焼いたもの。一般的に醤油味または塩味で食する。ショウガの搾り汁や、おろしたショウガを薬味とすることが多い。

スルメイカとサトイモの煮物
イカは1cm程度の輪切りとし、サトイモは皮をむいて下茹でしておく。
鍋に日本酒とみりんを煮立て、出汁を加え、サトイモとスルメイカを入れて落し蓋をして煮込む。十分に煮含めて味を染み込ませたらできあがり。

肝のホイル焼き
1cm程度の大きさに切ったイカの身に、中腸腺を搾り出したものと味噌、日本酒を少し混ぜ、ホイルでくるんだものをオーブンなどで蒸し焼きにしたもの。
 


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Posted by きくいち at 09:19│Comments(0)旬の魚

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