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2017年02月22日

魯山人が食べた驚きの食材と感想

好き嫌いが激しく、好きな料理ばかり食べている方にぜひ読んでいただきたい、魯山人の珍味の楽しみ方本
食べ物を大切に、愛おしみながら味わう魯山人の好奇心溢れるエピソードを、過去に食べた珍味と一緒に紹介します。

【山椒魚(サンショウウオ)】
すっぽんを煮るときのように煮てはみたが、中々どうして、簡単に煮えない。煮えないどころか、一旦はコチコチに固くなる。それから長いこと煮たが、一向軟らかくならない。2、3時間煮たが、なお固い。ともかく、長いこと煮て、ようやく歯が立つようになったので、ひと口食ってみたら、味はすっぽんを品よくしたような味で、非常に美味であった。汁もまた美味かった。
すっぽんと河豚の合の子と言ったら妙な比喩であるが、まあその位の位置にある美味と言う事が出来ようか。すっぽんも相当美味いが、すっぽんには一種の臭みがある。山椒魚はすっぽんのアクを抜いたような、すっきりした上品な味である。
昨日の味を忘れかね、次の日また食ってみたら、一層美味いのにはびっくりした。長いこと煮てなお固かったものが、ひとたび冷めてみると、不思議な事に非常に軟らかくなる。皮などトロトロになっている。そして、汁も翌日のほうがはるかに美味い。

魯山人が食べた驚きの食材と感想

今では中々口にすることは出来なくなってしまいましたが、「食べた事がないものを食べて、美味しい物を発見したいびっくり」という魯山人の好奇心が伝わってくるエピソードです。

【生くちこ・このこ】
「くちこ」を乾燥させず生で食べるのが「生くちこ」。生くちこはかの食通・北大路魯山人も絶賛したと言う珍味中の珍味。本来は生で食すもので日持ちがしないので、貴重な珍味だ。 

このごろ、酒に適する、また、美食家の気に入る美味いものの第一品はくちこの生なまであろう。この生のくちこは、東京には売っていない。自分たちは加州金沢から取り寄せるのである。この風味はちょっと他に類がない。このわたに似て、水分の多い目方の重いものであるが、卸値百匁十五円から二十円ぐらいの最高価格の美食のひとつである。

生は桜色と朱鷺色との中間ぐらいの淡紅色で、この種のものの中で一番感じがよい。乾燥したものはいくぶん代赭色に近い。生の香りは、妙にフランスの美人を連想するような、一種肉感的なところがあって、温かい香りが鼻をつく。とにかく、下戸も上戸も、その美味さには必ず驚歎する。そうして初めて口に上す者は、そのなんであるかを当てる者は少ない。

魯山人が食べた驚きの食材と感想

寒海鼠の胎卵が「このこ」、海鼠の卵巣を干した物が「くちこ」
海鼠(なまこ)は口から産卵することから、その名が付けられたのだそう。乾燥させて食べるのが定番で、地元の人も生で食べることは稀。今は、冷凍の瓶詰めで楽しめます。

【このわた・海鼠腸 】
これは寒海鼠の胎児の話であるが、そのはらわたは海鼠腸であって、これは大概の人がご承知のとおり、初見おか惚れという美人ではないが、トロトロと長く糸を引くやつを、一筋舌の上に乗せ、無上の味覚に陶酔し、顔面筋肉は、心の愉悦を表現して、やや弛緩する。そのころ、燗酒ひと口、ぐっと呑み干す。味覚、味覚……、その快味は真に言うべからざるものがある。

魯山人が食べた驚きの食材と感想
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【魯山人も憧れる鮎の洗い】
鮎は塩焼にして食うのが一般的になっているが、上等の鮎を洗い造りにして食うことも非常なご馳走ちそうだ。  私がまだ子どもで、京都にいた頃のことであった。ある日、魚屋が鮎の頭と骨ばかりをたくさん持ってきた。鮎の身を取った残りのもの、つまり鮎のあらだ。小魚のあらなんていうのは可笑しいが、なんといっても鮎であるから、それを焼いて出汁するとか、または焼き豆腐や何かと一緒に煮て食うと美味いには違いない。

それにしても、こんなに沢山あるとはいったいどういうわけだろうと、子供心に不思議に思って聞いてみた。すると、魚屋のいうのには、京都の三井みついさんの注文で、鮎の洗いをつくったこれは洗いだという。

私はずいぶん贅沢な事をする人もいるものだなあと驚き、かつ感心した。それ以来、鮎を洗いに造って食う法もあるということを覚えた。しかし、その後ずっと貧乏書生であった私には、そんな贅沢は許されず、食う機会がなかった。それでも、今からもう25年も昔になるが、遂ついに私もこの洗いを思う存分賞味する機会を得た。加賀の山中温泉に逗留していた時のことである。

ふと子供の頃知った鮎の洗いのことを思い出した。鮎も安かったからではあるが、さっそく鮎の洗いを造らして食ってみた。驚いた。とても美味うまいのだ。なるほど、三井が賞味したわけだと合点した。

魯山人が食べた驚きの食材と感想

塩焼きが定番の鮎。子供の頃から憧れていたものが食べられた時の美味しさは、きっと格別だったことでしょう。

【現代人も試せる…納豆茶漬け】
納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明したものではないが、世上これを知らないのは不思議である。

鮪の茶漬けなどと同様に、茶碗に飯を少量盛った上へ、適当にのせる。納豆の場合は、とりわけ熱飯がよい。煎茶をかけ、納豆に混和した醤油で塩加減が足りなければ、飯の上に醤油を数滴たらすのもいい。最初から納豆の茶漬けの為に練る時は、始めから醤油を余計混ぜた方がいい。元来、良い味わいを持つ納豆に対して、化学調味料を加えたりするのは好ましいやり方ではない。そうして飯の中に入れる納豆の量は、飯の四分の一程度がもっとも美味しい。納豆は少なきに過ぎては味がわるく、多きに過ぎては口の中でうるさくて食べにくい。  これはたやすいやり方で、簡単にできるものである。早速、秋の好ましい食べ物として、口福を満たさるべきではなかろうか。

魯山人が食べた驚きの食材と感想

現代人は、なかなか手が出しづらい珍味中の珍味が多い中、誰でも試せる魯山人のお勧めメニューです。

【珍味を楽しむ極意】
いくら珍しくとも、美味くなければ珍味とは言えない。世の中には珍しがられていても、美味くないしろものがいくらもある。

食への飽くなき探究心から、あらゆるものを食した魯山人。世界各国の食材や料理が楽しめるようになった現代、魯山人が生きていたら、どんなにうらやむことでしょう!?食べ物を大切に、そしてもっと美味しく味わう工夫は、現代人こそ見習うべきところがありそうですしょんぼり


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