2017年09月15日
「嫁に食わすな」とまで言われた「秋茄子」は…⁉
朝晩に秋の気配を感じるこの季節、日中の残暑との気温差によって実が締まり、茄子が美味しくなります。夏が旬である茄子が、わざわざ「秋茄子」と呼ばれて別格に扱われるのはこういうわけです。身体を冷やす効果の高い夏野菜の中でも、90%以上が水分でできている茄子は、特に解熱効果が高く、暑い日にお勧めです

「秋茄子は嫁に食わすな」という江戸時代にできた言葉がありますが、これを秋茄子の美味しさに着目した「嫁いびり」の言葉とするか、身体を冷やす効果を心配した“嫁孝行”の言葉とするか、これほど解釈が両極端な言葉も珍しいのではないでしょうか。
進んで決着をつける必要はないのかも知れませんが、私が思うに、これは前者が正解で、後者は後の世の人のフォローです
なぜなら…
・秋茄子の解熱効果ぐらいで、身体を悪くするなど大げさすぎる。
・狂歌好きで皮肉屋の江戸っ子が、わざわざ嫁にいたわりの言葉を残すとは思えない。しかも、当時の嫁は現代人が想像するよりはるかに強く逞しく、しおらしくて庇いたくなる存在ではなかった。

余談ですが、「しおらしい」の意外な語源をご存知でしょうか
昔、山間の百姓家では十分な塩が手に入りませんでした。そこで女房が、塩を持っていそうな行商人に言い寄り、身体と引き換えに塩を手に入れていました。素人ゆえに、その迫り方はぎこちなく、「この女はどうも塩が欲しいらしい」が「しおらしい」という言葉になり、今では可憐で従順な女性を指すようになったそうです。
「嫁に食わすな」シリーズは他にもあり、秋鯖、秋かます、秋の鮗(このしろ)、五月蕨など、いずれもおいしいものを指している。…といった理由からです。さらに決定的なのは、狂歌師としても有名な蜀山人(大田南畝)のこの句からも知れます。
「二人して 秋茄子を喰ふ 仲のよさ」
嫁と姑が、二人して仲良く秋茄子を食べる光景は、よほど珍しかったのでしょう
茄子の紫色に含まれる アントシアニンの効用

茄子が日本に伝来したのは7~8世紀のこと。元々はインドが原産で、中国を経由して我が国に入ってきたそうです。よほど日本人の好みに合ったのか、奈良時代にはすでに各地で栽培が始まっています。
今でこそ、色も形もさまざまな種類が栽培されていますが、主流なのは長卵型の千成茄子です。特に「茄子紺(なすこん)」と呼ばれるあの艶のある深い紫色。聖徳太子が制定した冠位十二階で、最も高い位である「大徳」の濃紫に近いせいもあってか、あの色に、代々我々は惹きつけられてきたのではないでしょうか
紫の色素の正体である「アントシアニン」はポリフェノールの一種で、抗酸化作用、老化予防、がん予防、高血圧予防、動脈硬化予防が期待されています。目と肝臓にも良いので、皮を剥いて作る茄子料理の場合も、皮は捨てずに塩揉みなどにしておくと、浅漬けとして重宝する上に日持ちがして、せっかくの効果を無駄にせずに済みます。
茄子がいかに日本人に好まれてきたかは、茄子が入ったことわざや格言、料理の多さが示す通りです。
代表的なものを挙げると、前述の「秋茄子は嫁に食わすな」以外に、まずは初夢に見て縁起の良いとされる「一富士 二鷹 三茄子」。
この後、「四扇 五煙草 六座頭」と続くと書かれた書物もあります。実はこの三つ、徳川家康の好きなものであった、もしくは初茄子が高価だったため、家康ゆかりの駿河の国の高いものを挙げた、という説が有力です。また、「親の言葉となすびの花は千に一つの無駄もない」は、茄子は花が咲くと必ず実を結ぶことを例えた、ありがたい格言です。
焼いても揚げても漬物にしても美味しい茄子は、江戸の節約おかず番付、「日々徳用倹約料理角力取組」
の夏の段に、「茄子の揚げ出し」、「なすび油揚」、「茄子の鴫焼(しぎやき)」と三品もランクインしています。中でも、ネーミングとしておもしろいのが「茄子の鴫焼」です。
「鴫焼」とは元来、野鳥の鴫の肉を、茄子をくりぬいた器に入れて焼いた料理のことで、天文4年(1535年)に書かれた「武家調味故実」に、「鴫壺焼(しぎつぼやき)」として調理法が掲載されています。

その後、仏教の普及とともに肉食が敬遠されるようになり、料理名だけ残ったというわけです。このように、肉を使っていないのに、鳥の名前がつけられている料理はほかにもあります。豆腐などの素材を雉の肉に見立てた「雉焼(きじやき)」、同じく豆腐に各種野菜を混ぜて揚げた「雁もどき」、鮒を焼いた「雀焼き」、蛤を焼いた「千鳥焼き」など。
やはり、肉の味が恋しかったのでしょうね
さて、この「茄子の鴫焼き」。出来上がりをみると、「茄子田楽」とどこが違うの? という疑問がわくと思いますが、違いはごま油を使う点です。
(最も現在では、茄子を油で炒めて味噌や醤油で味付けするものを、総称して「鴫焼き」と呼んでいるようです)食べててみると、田楽よりコクがあり、のどごしがなめらかです。
まともに焼くと結構時間がかかるのと、味噌をぬるタイミングが難しいので、ここでは焼き時間を短縮し、失敗しない方法をまた、ご紹介します
冷房が必要な時期もあとわずか。
旨みがギュッと凝縮された秋茄子を食べて、残暑を乗り切りましょう


「秋茄子は嫁に食わすな」という江戸時代にできた言葉がありますが、これを秋茄子の美味しさに着目した「嫁いびり」の言葉とするか、身体を冷やす効果を心配した“嫁孝行”の言葉とするか、これほど解釈が両極端な言葉も珍しいのではないでしょうか。
進んで決着をつける必要はないのかも知れませんが、私が思うに、これは前者が正解で、後者は後の世の人のフォローです

・秋茄子の解熱効果ぐらいで、身体を悪くするなど大げさすぎる。
・狂歌好きで皮肉屋の江戸っ子が、わざわざ嫁にいたわりの言葉を残すとは思えない。しかも、当時の嫁は現代人が想像するよりはるかに強く逞しく、しおらしくて庇いたくなる存在ではなかった。

余談ですが、「しおらしい」の意外な語源をご存知でしょうか

「嫁に食わすな」シリーズは他にもあり、秋鯖、秋かます、秋の鮗(このしろ)、五月蕨など、いずれもおいしいものを指している。…といった理由からです。さらに決定的なのは、狂歌師としても有名な蜀山人(大田南畝)のこの句からも知れます。
「二人して 秋茄子を喰ふ 仲のよさ」
嫁と姑が、二人して仲良く秋茄子を食べる光景は、よほど珍しかったのでしょう

茄子の紫色に含まれる アントシアニンの効用

茄子が日本に伝来したのは7~8世紀のこと。元々はインドが原産で、中国を経由して我が国に入ってきたそうです。よほど日本人の好みに合ったのか、奈良時代にはすでに各地で栽培が始まっています。
今でこそ、色も形もさまざまな種類が栽培されていますが、主流なのは長卵型の千成茄子です。特に「茄子紺(なすこん)」と呼ばれるあの艶のある深い紫色。聖徳太子が制定した冠位十二階で、最も高い位である「大徳」の濃紫に近いせいもあってか、あの色に、代々我々は惹きつけられてきたのではないでしょうか

紫の色素の正体である「アントシアニン」はポリフェノールの一種で、抗酸化作用、老化予防、がん予防、高血圧予防、動脈硬化予防が期待されています。目と肝臓にも良いので、皮を剥いて作る茄子料理の場合も、皮は捨てずに塩揉みなどにしておくと、浅漬けとして重宝する上に日持ちがして、せっかくの効果を無駄にせずに済みます。
茄子がいかに日本人に好まれてきたかは、茄子が入ったことわざや格言、料理の多さが示す通りです。
代表的なものを挙げると、前述の「秋茄子は嫁に食わすな」以外に、まずは初夢に見て縁起の良いとされる「一富士 二鷹 三茄子」。
この後、「四扇 五煙草 六座頭」と続くと書かれた書物もあります。実はこの三つ、徳川家康の好きなものであった、もしくは初茄子が高価だったため、家康ゆかりの駿河の国の高いものを挙げた、という説が有力です。また、「親の言葉となすびの花は千に一つの無駄もない」は、茄子は花が咲くと必ず実を結ぶことを例えた、ありがたい格言です。
焼いても揚げても漬物にしても美味しい茄子は、江戸の節約おかず番付、「日々徳用倹約料理角力取組」

「鴫焼」とは元来、野鳥の鴫の肉を、茄子をくりぬいた器に入れて焼いた料理のことで、天文4年(1535年)に書かれた「武家調味故実」に、「鴫壺焼(しぎつぼやき)」として調理法が掲載されています。

その後、仏教の普及とともに肉食が敬遠されるようになり、料理名だけ残ったというわけです。このように、肉を使っていないのに、鳥の名前がつけられている料理はほかにもあります。豆腐などの素材を雉の肉に見立てた「雉焼(きじやき)」、同じく豆腐に各種野菜を混ぜて揚げた「雁もどき」、鮒を焼いた「雀焼き」、蛤を焼いた「千鳥焼き」など。
やはり、肉の味が恋しかったのでしょうね

さて、この「茄子の鴫焼き」。出来上がりをみると、「茄子田楽」とどこが違うの? という疑問がわくと思いますが、違いはごま油を使う点です。
(最も現在では、茄子を油で炒めて味噌や醤油で味付けするものを、総称して「鴫焼き」と呼んでいるようです)食べててみると、田楽よりコクがあり、のどごしがなめらかです。
まともに焼くと結構時間がかかるのと、味噌をぬるタイミングが難しいので、ここでは焼き時間を短縮し、失敗しない方法をまた、ご紹介します

旨みがギュッと凝縮された秋茄子を食べて、残暑を乗り切りましょう

Posted by きくいち at 15:41│Comments(0)
│季節の野菜と果実