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2012年08月02日

江戸前の鮨の代表ネタ、シンコが入荷しました。

江戸前の鮨にはコハダは「光り物」として、なくてはならないものです。
その中で「シンコ」は、約一ヶ月間しか食べれない高級魚なのです。

江戸前の鮨の代表ネタ、シンコが入荷しました。 

ちなみに「シンコ」は「コハダ」の幼魚のことです。
成長するにつれて呼び名が変わる魚で4~5cmくらいまでのものを「シンコ」、6~10cmくらいまでのものを「コハダ」11~14cmくらいまでのものを「ナカズミ」それ以上のものを「コノシロ」と呼びます。このように呼び名が変わるものを出世魚と言いますが、コノシロの場合、成長するにつれて価値が下がってしまいます。(通常は成長すると価値が上がる魚が多い)

これは、江戸前鮨のネタとして無くてはならない存在で、しかも小さいほうが好まれ、コノシロはあまり使われないためです。中でも初物のシンコはキロ当たり10万円以上の値が付いたりすることもあるのです。サッパ(ママカリ)とよく似ていますが、コノシロに見られる、えらぶたの後ろにある黒斑がないことで区別できます。また四国の方では「ドロクイ・ジャコ」、関西九州の方では「ツナシ」などとも呼ばれています。

シンコもコハダも一般者には区別がつき難いのですが、江戸前の鮨屋では、一貫の鮨をにぎるのにシンコは2~4尾、コハダは一尾、ナカズミは1/2尾使いします。(九州では「コノシロ」を背越しと言う調理法でよく使われますが、その反対に「シンコ」はあまりて手に入らないので使わないようです)
背越し」とは…魚の切りかたの一つで、フナ・アユなどを頭・ひれ・はらわたを取り、中骨のあるままぶつ切りにすることです。

江戸前の鮨の代表ネタ、シンコが入荷しました。 

旬は地方や人によってさまざまで、コノシロの場合どの成長期を求めるのかでも違ってきます。成魚のコノシロの場合は脂がのる晩秋から早春が旬だと考えています。また、鮨ネタとしてであれば、シンコからコハダと言う事になり、春に生まれ、シンコが獲れるのは夏、コハダはその後と言う事になります。シンコ(7,8月)→コハダ(8,9月)→ナカズミ(10月)→コノシロ(11月から2月
親の方は冬や春先が旬になりますが、幼魚のシンコは夏場のみの季魚です。

盛りは6月~7月、少し過ぎましたが、まだいけます。シンコは、寿司職人にとって大トロなんかよりもずっと重要な仕事なのです。コハダは塩の振り方、酢での締め方、一回として同じ加減って訳にはいきません。魚の状態が日によって違うからです。つまり自動化できない「職人の仕事」なのです。

シンコを捌くとほんの3センチくらいにしかなりませんので、いっそう塩と酢の加減がデリケートになってきます。それがどういう意味かと言うと職人で(店で)味が極端に変わるという事です。大トロは仕入れで8割がた味が決まりますが、シンコは仕込みが8割以上という事になります。

江戸前の鮨の代表ネタ、シンコが入荷しました。 

まだ新米の小僧の頃ですが、コハダは寿司屋につきもので、しかも安く仕入れでもトロ箱(木箱)でどーんと来るのです。小さいからといってサバキが楽になるわけじゃありません。ウロコを取り、頭を落とし、ハラワタを出し水洗い。次に腹開きにして腹骨を取る。数が多いから手間は大変でウンザリしたものです。鮨屋にとって大事な仕事だって気づいたのはずっと後のことで、それからは仕込みにも気合いが入ったものでした。 

江戸前の鮨の代表ネタ、シンコが入荷しました。
                     
昔は、「コノシロ」と言う魚は、誰も食べませんでした。それは、腹が弱く置いとくだけで腹から、溶けてしまうからで、武家社会では、腹が切れるとか、この城を食うと、言って忌み嫌っていました。

また、ある村に鬼が出たそうです。鬼は、長者の娘に惚れて、嫁によこせと長者に迫ったそうです。だが、大事な娘を鬼にやる訳にはいかない…考えた長者は、娘は病気で死んだと嘘をつき、「コハダ」を棺桶にたくさん詰め焼いたそうです。「コハダ」を焼くと屍の臭いがすると言われていました。その臭いをかいだ鬼は、娘が死んだものと思い込み諦めたそうです。「コハダ」は、子の肌・「コノシロ」は、子の代わりに火葬すると意味があったそうです。

昔は、流通が悪かったので「腐りかけたコハダ」を焼いたから異臭がしたと言われています。普通は、塩をして、酢につけて(酢締め)食べますが、本当は焼いても美味しい魚なのです。

ニシン科の魚ですが、ニシンのように幻にならずに、いつまでも国産ものを食べていたいものですよね。浜名湖直送の「新子」…食通の方は、この美味しさを知っています。知らない方は、この機会に是非どうぞ…。

コノシロの主な産地は…日本海側では新潟以南、太平洋側は松島湾以南から、東シナ海や南シナ海の北部まで広く分布していて、主に海の表層から中層にかけて群れを作って生活しています。日本では浜名湖、伊勢湾や長崎などの九州沿岸などが産地ですが中でも浜名湖の「新子」は超高級ブランド品です。


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Posted by きくいち at 09:45│Comments(0)寿司ネタ

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