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2017年02月17日

実践できる!魯山人の鍋

書画家、陶芸家であり、名うての美食家で、自ら料理もした北大路魯山人。著作では食に関する独自の考察を多く残しています。その中から、忘年会での小ネタにもなる、鍋料理に関するエピソードをまとめました。

【砂糖を入れないすき焼き】
食通の間では知られていても、実践している人は見たことがないといわれる魯山人スタイルのすき焼きの食べ方です。

実践できる!魯山人の鍋

要は肉と野菜をいっしょに煮込まず、焼いては食べの繰り返しなのだ。戦前は味醂も用いず、醤油と酒のみで調理していたようで、甘みは全くない。戦後になると、少し嗜好が変化したのか、味醂でほんのり甘みを持たせている。それでも極少と記しているからほぼ醤油と酒の調味だと考えていいだろう。魯山人はある文章に「砂糖の乱用が各々の持つこところの異なった味を破壊し、本質を滅茶苦茶にしている如き、それである。

実践できる!魯山人の鍋

砂糖さえ入れれば美味いとする今の料理は、極端に味覚の低下を示している」と書いている。一般のすき焼きを「甘くどいごちゃ煮」と言っていることからしても砂糖を用いる気は一切なかったと思われる。魯山人曰く、すき焼きとは「まず食べたいだけの肉を焼き、それを絶妙のタイミングで食べ終えてから、食べたい分だけの野菜を入れ、少量のだしを注ぎ、味付けして煮る」ものらしい。決してグツグツ煮てはいけないようだ。肉は火が通りすぎないように半熟の表面が桃色をしているままに食べること。葱はけちらないで必ず一皮剥く。春菊も歯に残りそうな部分は外しておくとしている。これは口内や歯間に繊維が残ることを嫌がったため。葉物に煮立つまで入れないとしているのも、だしが青臭くなってしまうことに対して注意を促しているからである。

【材料は牛肉と長ネギだけの秘伝のネギすき焼き】
魯山人が考案した「ネギすき焼き」…材料は牛肉とネギだけ。肉を焼き割り下を加えたら、鍋の高さに筒切りにしたネギを立てて並べる。「ネギの中心部に肉汁が染み込んで…。ウム…びっくり肉いらない。ネギの方が美味しいかもしれないびっくり

実践できる!魯山人の鍋

すき焼き以外でも、鍋のネギは煮込む前に焦げ目を付けた程度の焼きネギにすると甘さが倍加します(ネギを調理する前に、まな板の上で根っこから先の方に向かって叩くと甘くなります)

【中国から伝わった常夜鍋】
魯山人の著書には「宵夜鍋」と表記され、「中国から伝わった」と書いています。日本ではいつの間にか「宵」が「常」に変わって広まったのではないかといわれている鍋料理です。基本は、豚肉とホウレン草を水と酒で煮て、醤油かポン酢で食べるというシンプルなもの。

実践できる!魯山人の鍋

この鍋、知っている人は鍋通と言ってもいいと思います。その名も「常夜鍋」。一晩中食べ続けることができるとか、美味しくて毎日食べられるからとか、名前の由来はあれこれあるらしいのですが、美味しいのは事実です。聞くところによると、あの北大路魯山人が自らの著書で紹介した逸品らしいです。

【山葵で頂く鴨鍋】
魯山人は、鴨には山葵が合うと主張して、パリの「トゥールダルジャン」を訪れたときも、名物の鴨のローストを、オレンジソースではなく、持参した山葵醤油で食べたというエピソードがあるほど。魯山人は鴨とホウレン草を非常に好んだそうです。

実践できる!魯山人の鍋

【寄せ鍋よりも楽しみ鍋】
魯山人自身の鍋料理の考察。食についての彼の美学がうかがえます。「材料を盛るのは、深鉢にこんもりと盛るのがよろしい」とも。

実践できる!魯山人の鍋

「鍋料理」のことを、東京では「寄せ鍋」というが、上方では「楽しみ鍋」ともいっている。なぜ「楽しみ鍋」というかといえば、たいの頭があったり、蒲鉾があったり、鴨があったり、いろいろな材料がちらちら目について、大皿に盛られたありさまが、はなやかで、あれを食べよう、これを食べようと思いめぐらして楽しみだからである。
「楽しみ鍋」という名称は、実によくあてはまっている。しかし、「寄せ鍋」というのは、なんだか簡単すぎて感じのよい名前ではないと思う。「鍋料理」は先にもいった通り、材料がいろいろあるし、それを盛る盛り方にもなかなか工夫がいるのである。この点を注意しないで、ぞんざいに扱うと、いかにも屑物の寄せ集めみたいになってしまう。

実践できる!魯山人の鍋

京都生まれの魯山人は、料理も関東より上方の味になじみ、パリの「トゥールダルジャン」で名物の鴨のオレンジソースを拒否して持参した山葵醤油を使ったというエピソードにも見られるように、好みがかなりはっきりしていた美食家だったことがうかがえます。レシピも、常夜鍋のように多くの人に愛されているものから、幻に近い砂糖なしのすき焼きまで両極端。しかし、だからこそ、その個性で今に名を残しているのでしょう。この冬は魯山人の鍋料理を囲んで温まってみてはどうですかニコニコ


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