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2017年08月19日

天平年間に伝来した玉蜀黍(とうもろこし)

コロンブスがアメリカ大陸で発見し、ヨーロッパに持ち帰った玉蜀黍が、ポルトガル人によって日本に持ち込まれたのは天正7年(1579年)のことでした目

当時は、南蛮船が運んできた黍(きび)に似た黄色い植物なので、南蛮黍(なんばんきび)と呼ばれていました。この時に伝来したのは硬粒種(フリントコーン)という種類で、現在私たちが食べている、甘くて柔らかい甘味種(スイートコーン)とは違い、食べるのに手間がかかりました。

天平年間に伝来した玉蜀黍(とうもろこし)

今でこそ玉蜀黍を好物に挙げる人は多いですが、硬粒種しかない昔は、好んで食べるものではなく、雑穀扱い下降山間部で、粒を干して粉にして、糅飯《かてめし》として米や粥に混ぜて炊いたり、餅に混ぜたり、味噌汁に入れていただくことが多かったようで、江戸時代初期に刊行された「本朝食鑑」にも、「玉蜀黍は煮たり粉末を餅にして食べる」と書かれています本

粉にするのは面倒なので、そのまま茹でて食べることもありましたが、茹で時間が長くかかる上、硬くて美味しくなかったことは想像に難くありません。私は常々、浮世絵に度々描かれた玉蜀黍なのに、ついぞ料理書の素材として見かけたことがないことを不思議に思っておりましたが、これで合点がゆきました。玉蜀黍は、貧しさゆえに仕方なく食べていたものだったのですひみつ

硬粒種は手に入りづらいため、紹介するレシピでは甘味種を使っておりますが、江戸の人々は数段不味い玉蜀黍を食べていた、と思ってください。また、粉末に関しては、スコーンやお菓子作りに使われるコーングリッツ(粗挽きコーン)がまさしく硬粒種による粉なので、江戸時代の気分で味わうことができます。

レシピ通りに作っていただくと、デンプン質と食物繊維が豊富なため、確かに腹もちやお通じが良くなります。よってダイエット食としてメニューに摂り入れるには有効ですが、コーンの粒がざらざらと舌に当たり、餌っぽいイメージが残ります。そこでお勧めなのは、乳製品を加えてアレンジしていただくことですお得

コーングリッツの味噌汁に牛乳と塩を加えると、なかなか乙な和風ポタージュスープになりますし、玉蜀黍粥にチーズをプラスすると、食べやすいリゾットになります。また、茶碗蒸しに加えることで、卵の量が少なくても固まります。 (スイートコーンが伝来したのは、明治以降のことです。北海道を農地開拓する際、甘味種の玉蜀黍を植え、その美味しさからたちまち全国に広がっていったそうです)

天平年間に伝来した玉蜀黍(とうもろこし)

玉蜀黍は、夏バテ予防に最適な野菜ですアップ粒の皮の部分は、消化はあまりよくありませんが、その分、胃腸の働きを活発にし、腸をきれいにしてくれます。また、粒の中の甘味は食欲を増進させ、夏バテの時でもいただくことができます。利尿効果も高く、腎臓や糖尿、高脂血症、尿路結石、高血圧に効果があると言われています上昇

玉蜀黍を選ぶ際は、できるだけ新鮮な物を…「朝採れ」などと表記してあるものが良いでしょう。
糖度は時間と共に落ちてゆきますので、買って帰ったら、とにかく熱を入れること。茹でたり、ラップにくるんでレンジでチンするなどし、冷めてから冷蔵保存することをお勧めします。それも面倒な時は、皮を剥かずにそのままレンジへOK

皮と髭がラップ代わりになり、旨味が逃げないため、蒸し焼き状態で美味しく上がります。以前、「枝豆」の時にも書かせていただきましたが、玉蜀黍を茹でた場合は、同じ茹で汁で枝豆を茹でると、とうもろこしの風味が枝豆に加わり、「だだ茶豆」のような味わいが生まれます。 また、玉蜀黍の髭は花柱なので、粒の数と同じだけ生えています。つまり、髭が多いほど粒がたくさん詰まっているということですので、是非目安にしてみてくださいちょき

ちなみにこの髭、乾燥させてお茶を煮出すと、むくみを抑え、利尿効果を高め、血圧を抑え、黄疸、肝炎、胆のう炎、糖尿病などの予防になります。
中国では生薬として、南蛮毛《なんばんもう》や玉蜀桼蕊《ぎょくしょくきずい》という名前で売られています。簡単に作れるので、夏場のむくみに悩んでいらっしゃる方は、試してみてはいかがでしょうかにっこり


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Posted by きくいち at 09:13│Comments(0)季節の野菜と果実

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