› きくいち日記 › 寿司ネタ › 丹後とり貝

2013年06月07日

丹後とり貝

丹後地方を代表する初夏の味覚、舞鶴産の「丹後とり貝」は、6月の半ばに舞鶴湾沖の養殖ものが最盛期を迎えます。舞鶴湾は、とり貝の養殖では国内最大の出荷量を誇りその品質のよさもあって他産地にはない大きさと味が京阪神の高級料亭などで引っ張りだこで全国的にとても有名です。

舞鶴湾や若狭湾はもともと、とり貝の好漁場でしたが、豊凶の問題に取り組み、京都府立海洋センターが、稚貝を人工孵化させ、コンテナに稚貝を入れて海中に吊り下げる方法を開発し、実用化されています。この方法で育てられた、とり貝は天敵のタコやヒトデから守られて、天然物より大きく育ち、安定して供給されるようになりました。この手法で育てられるものを「育成とり貝」といい「丹後とり貝」のブランド名で宮津市や、舞鶴市の漁業者のもとで育成・生産拡大に取り組まれています。しかし、大きさ、味共に非常に優れているうえ、まだ数量的に少ない事もあって非常に高価な食材として、高級料理店でしか扱えない状況です。

丹後とり貝
ちなみに、舞鶴の育成物で一つ1200円ほどしていました。一つですよびっくりでも、一つで、握り3~4貫分位とれる大きさではありましたが…。

「丹後とり貝」は他産地に比べて大きく、味も良く殻つきで100グラム以上のもので肉厚で甘みが増したブランド食材です。その大きさに驚きです。なんといっても肉厚で大きくて(普通の2~3倍ほど)あり、噛締めるたびに、甘みがじゅわ~じゅわ~と出てくるのです。寿司ネタとして人気で、一度食べると、忘れられない…そんな味です。 

生もやわらかくて、最後の歯ざわりもなんともいえないのですが、一般的に出回っている 茹でたものも肉厚の歯ごたえと、噛んでいくうちに広がる甘みがあって、季節のおいしい贅沢を感じます。

とり貝は消化管に泥を含んでいるので、市場では、剥き身を開いて湯引き(さっと塩や酢を加えた熱湯をくぐらせ、氷水に落とす)し冷凍されたものがパックに並べられ出荷されています。なので、一般の方はそうやって並んでいるとり貝しかみた事が無く、殻つきの活けの物を見た事が無い人も多いのではないでしょうか?
輸入も多く、中国や韓国から、開いて湯引きされたものが冷凍で大量にはいってきています。回転寿司でもよく見かけるのはこういった輸入物がほとんどです。

旬はなぜか太平洋側では春先、日本海側では夏と、ずれています。なお、ここでの旬とは、その地域での水揚げされる時期を指しています。中には冬が美味しいとされる文献もみられますが、私は残念ながら食べ比べた事が無いので分かりません。但し、一度湯引きされたものは冷凍してもあまり食味が落ちないので、そうして冷凍されたものが通年出回ています。

市場では普通、殻をはずして足を開き、湯どおししたものをプラスチックの板に乗せて売られています。これはそのままで寿司ネタとなるもので、丁寧な寿司屋ですら甘酢で洗う程度の手間しかかかりません。(開いた三角が大きくて黒いものほど値がはります)
また入荷量は少ないものの、この加工されたものより、このように殻付きで生きているものの方が格段に美味しく、これを剥き身にして開き湯通しするのですが、なかなか身の黒い色合いをそのままに仕立てるのは難しいです。
(足の黒い色素はとれやすく、できるだけ触らないようにします。我々寿司職人は俎板多を使わず、ガラス板の上で開くなどで色素が落ちないようにしています)

丹後とり貝 

2007年には、キリンビールの全国旨いものめぐりのひとつに 「舞鶴産の 丹後とり貝」が選ばれたそうです。貴重な丹後とり貝から少ししか取れない「とり貝のひも」も美味しく弾力と歯ごたえがあって、貝の旨みをぎゅっと凝縮した味で、これがまたお酒のおつまみには、めちゃくちゃ合います。(酢の物などで食べたら最高ですちょき他には湯引きしたものをバター焼きにしても美味しいです)

「鳥貝」という名前の由来は貝殻から伸びる黒い足が、鳥のくちばしに見えるからだとする説と、食べた時の食感が鶏肉に似ているからだとする二つの説があります。 
 


同じカテゴリー(寿司ネタ)の記事
今日は海苔の日!!
今日は海苔の日!!(2022-02-06 08:22)


Posted by きくいち at 10:41│Comments(0)寿司ネタ

コメント

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
丹後とり貝
    コメント(0)